彼女の「生きる道」

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友人が主役をやるというので、流山児★演劇塾2003年度の
卒業公演を見に行った。

題目は、佐藤信氏が1969年に書き下ろした「鼠小僧次郎吉」。
岸田戯曲賞を受賞した作品だ。

同じ流れ星に願いを託した5人の鼠小僧と、「子の刻」を待ち受ける三人の巫女、
後世大事に「あさぼらけの王」(これが何かはヒ・ミ・ツ)を守り続ける門番を描いた
とっても不思議な話。場面が次々と変わる難解なストーリーに、自分の中で消化
しきれない部分もあったが、全身全霊をかけて歌、踊り、芝居に取り組む
役者さんたちの姿を、気付けば夢中で見ていた。

友人が演じたのは、初演で小川真由美さんが演じたという「女郎」の役。
髪を真っ赤に染め上げ、着崩した着物がなんとも艶っぽい。
時には鬼のような形相を、時には恍惚の表情を浮かべる。
1年半前にはサラリーマンをしていたとは思えない、
まったく違う友人の「顔」がそこにはあった。

「稽古は苦しいけれども、今回は苦しさを楽しんでいる自分がいる。演出家を信じ、
共演者を信じ、自分を信じて舞台に立ちたい」という彼女の言葉から
演劇にかける意気込みが伝わってくる。これが彼女の「生きる道」だ。

そこまで「演劇」に向かわせるものは何なのだろう。
今後の舞台を見ながら、その答えを探っていきたい。