目の前の「偶然」、どうする?

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iモードを生み育てた松永真理さんの『シゴトのココロ』(小学館)を読んだ。
この本は、松永さんの『Domani』連載を加筆改稿したものだ。

読んでいく中で、いくつか共感できるメッセージがあった。
なかでも「そのとおり!」と感じたのは次のくだりだった。

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  偶然を敵に回すか、味方につけるか。
  たとえ不本意な異動であっても
  ま、ここは一度やってみるかといった
  寛容さがあっていい。
  目の前の偶然に、心を開いてみるといい。
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松永さんは、28歳から29歳になろうという頃、
花形雑誌『とらばーゆ』の編集チーフを担っていたが、
突然、資料編を作る『リクルートブック』という編集部へ異動になった。

当初は「目に見える実績をあげているのに、なぜ自分が・・・」
と感じたそうだが、異動後に

「自分こそが一番この仕事に精通している、という思い込みが実はガンだった。
過去の成功例や方法は、物事を進化させずに停滞させる、時に後退させる」

と気付いたのだという。

結局、彼女は異動した部署でいろいろなことを学んだ。

実は私もそうだった。

研究員としてシンクタンクに入社し、7年半アジアを調査・研究する部署にいたが、
突然、企画部への異動を言い渡された。

会社の合併や調査部門の営業譲渡などを目前に、人手が足りないというのだ。
上司と何度も話し合ったが、人事の発令が変わるわけではなかった。

これまで主体的に企画書を作り、レポートを書いてきた(つもりの)私にとって、
企画部での仕事は、事務的かつサポート的であまり面白いとは感じられなかった。

が今思えば、
「これからどう生きていくか」「どのような仕事をしていくか」
を見直す、ホントに良い機会となったのだ。

異動したことで、
会社全体や各部門の活動を見ることもできたし、
残業時間が減ったので、週1回ライタースクールにも通えた。

そして、最終的には会社をやめ、現在のように、フリーとしてモノを書いていこうと
決断することができた。これも、この異動があったからだと思う。

「偶然を敵に回すか、味方につけるか」

考え方ひとつによって、世界がぐんと広がることもある。
時には、目の前の偶然に身を任せてみてはどうだろう。